書類、仕様、実測、内部構造、掲載資料から、一台の記録をまとめる。
このページは、1994年に製作されたBenedetto Renaissance Series “Il Fiorentino” #31494の個体資料です。
Renaissance Series全体の成立やIl Palissandroとの関係を考察するのではなく、ここではIl Fiorentinoそのものに焦点を絞ります。所有者登録カード、仕様書、実測値、内部構造、書籍への掲載記録を、旧記事で公開していた画像とともに整理しました。
個体の基本情報
- Model
- Renaissance Series “Il Fiorentino”
- Serial
- #31494
- Year
- 1994
- Body
- 16インチ/ノンカッタウェイ
- Strings
- ナイロン弦
- Nut width
- 約2インチ(実測約52mm)
Il Fiorentinoは、16インチのノンカッタウェイ・ボディにナイロン弦を組み合わせたアーチトップです。スロテッドヘッド、幅広いネック、左右非対称に処理された指板エンド、アッパーバウトの花弁状サウンドホールなど、通常のBenedettoとは異なる要素が随所に見られます。
Renaissance Seriesとして製作された二本のうち、最初の一本にあたります。シリーズとしての解釈は別記事へ譲り、このページでは資料から確認できる事実を中心に記録します。
Warranty & Owner Registration
以下は、この個体に付属するWarrantyおよびOwner Registrationの記録です。
Benedetto氏のログブックでは、#31494の送り先に「Self」と記されています。この記載から、製作時にはBenedetto氏自身のための楽器として扱われていたことがうかがえます。
Specifications
仕様書には、通常のBenedettoとは異なるIl Fiorentinoの構成が記録されています。資料そのものの表記を確認できるよう、旧記事で公開していた画像をそのまま掲載します。
ナット幅の表記
『Making an Archtop Guitar』をはじめ、一部の資料ではナット幅が1 3/4インチと表記されています。しかし、この個体の実測値は約52mmで、実際にはおよそ2インチです。
内部構造とブレイシング
Il Fiorentinoは、既存のアーチトップへ単にナイロン弦を張った楽器ではありません。スティール弦より低い張力に応答させるため、内部には一般的なBenedettoのXブレイスやパラレル・ブレイスとは異なる、細いブレイスが配置されています。
もう一つ注目したいのが、花弁状サウンドホールの裏側です。複雑な開口部を補強するため、裏面にはシート状の補強材が貼られています。外観上の意匠だけでなく、その形を成立させるための処理も確認できます。
書籍に残されたIl Fiorentino
Il Fiorentinoは、Benedetto氏自身の著書をはじめ、複数のギター関連書籍で紹介されています。ここでは旧記事に掲載していたページ画像を、書名ごとにまとめます。
Making an Archtop Guitar
The Acoustic Guitar / The Guitar / The Illustrated Directory of Guitars
Dream Guitars
Il Fiorentinoの価値は、特殊な外観だけにあるわけではありません。実物、書類、実測、内部写真を重ねることで、ナイロン弦アーチトップを成立させるために、Benedetto氏がどこまで楽器全体を組み直したのかが見えてきます。
本ページは、今後新たな資料や確認事項が得られた際に追記できる、#31494の個体記録として残します。

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