Heritage Sweet 16を眺めながら

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Heritage Sweet 16を眺めながら

足りているのに、足りない

現在、Heritage Sweet 16は私のエースギターである。

見てよし、弾いてよし。壁に掛けて眺めているだけでも心が落ち着き、手に取れば、こちらに余計な緊張を強いることなく応えてくれる。ネックの握りは心地よく、音にも不満はない。16インチという大きさも扱いやすく、構えたときの収まりもよい。

これ以上、何を求めるのか。

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そう思えるギターである。

Sweet 16を眺めていると、かつて所有していた1965年製Gibson L-5Cの面影を、そこはかとなく感じることがある。

もちろん、同じ楽器ではない。ボディサイズも細かな仕様も異なる。それでもネックを握った瞬間、記憶のどこかに残っていた感触が蘇る。音を出せば、L-5Cで感じた音色の名残まで聞こえてくるような気がする。

単に外観が似ているという話ではない。手に触れたときの感覚や、弦を鳴らしたときの反応の中に、遠い親類のような気配がある。

Heritageといえば、カラマズーの旧Gibson工場に残った職人たちと、当時の製作機材を引き継いで始まったブランドである。かつてGibsonを作っていた人々が、同じ土地で、当時の機材を用いて再びギターを作り始めた。その出自はHeritageの大きな魅力の一つであり、私がこのブランドに惹かれる理由でもある。

heritage-sweet-16-neck.jpg

Sweet 16の中にL-5Cの面影を感じることは、むしろその物語に沿ったものなのかもしれない。

しかし、その物語は良くも悪くもHeritageにつきまとう。

「かつてGibsonを作っていた職人たちが、当時の製作機材を使って作ったギター」

この言葉はHeritageの価値を高める一方で、いつまでもGibsonとの比較を呼び込む。
Heritageを説明するためにGibsonの名前を借りれば借りるほど、HeritageはGibsonの影から離れにくくなる。

美しい木目や整ったフォルムを眺めていると、その魅力に癒されながらも、ときどき頭の中に嫌な言葉が浮かぶ。

heritage-sweet-16-tail.jpg

Poor Man’s Gibson

Sweet 16がそう訴えてくるわけではない。むしろ楽器の方は、そんな卑屈なことなど一切考えず、壁に掛かって堂々としている。

勝手に余計なことを考えているのは、所有者の方である。

Sweet 16は、決して安物ではない。作りもよく、音もよく、現在の私にとって最も手に取る機会の多いギターである。それでも、美しいトップや端正なボディラインを見ていると、その向こうにL-5Cの姿が重なってしまう。

では、Gibsonを買えばよいではないか。

身も蓋もないが、まあその通りだ。

しかし、まずタマがない。私がもう一度所有したいと思えるようなL-5Cは、そう都合よく市場に現れてくれない。とりわけ、状態、年代、外観、価格まで含めて納得できる一本となれば、なおさらである。

そして、仮に出てきたとしても、今度は価格が立ちはだかる。

一ドル百円の時代を知っている。さらに言えば、一ドル八十円前後だった時代さえ知っている。そんな記憶を抱えたまま現在の海外相場を円に換算すると、どうにも貧乏根性が働く。

向こう数年の惨めな暮らしぶりを受け入れられるなら、買えないわけではない。

だが、そこまでして買うことに納得できるかとなると、話は別である。

昔ならこの金額で、という計算を始めた時点で、もういけない。過去の為替を持ち出して現在の楽器を値踏みしても仕方がないことくらい、頭では分かっている。それでも電卓は容赦なく、私がいかに悪い時代にギターを欲しがっているかを数字で示してくる。

良い個体はない。あっても高い。高い理由も分かる。しかし、分かることと納得することは別である。

結局、動きたくても動けない。

その間にも、壁にはSweet 16が掛かっている。

眺めれば美しい。弾けば心地よい。かつて所有したL-5Cの記憶を、わずかにこちらへ返してくれる。しかもGibsonほど露骨に財布へ覚悟を迫ってくることもない。

見てよし、弾いてよし。

これ以上、何を求めるのか。

本来なら、ここで話は終わるはずである。

だが、Sweet 16はL-5Cへの欲求を慰めてくれる一方で、L-5Cを忘れさせてはくれない。

まったく、よくできたギターである。

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