D’Angelico、今さら何と読むべきか

 

D’Angelico。

さて、これは何と読むべきなのでしょうか。

今さらそんなことを、と思われるかもしれません。実際、日本の楽器店やギター雑誌などでは、多くの場合「ディアンジェリコ」と表記されています。私もこのサイトでは、D’Angelicoを「ディアンジェリコ」と書いてきましたし、今後もその表記で統一するつもりです。

ただ、イタリア語として見ると、この読み方は少し話が違ってきます。

目次

「イタリア語としては、ダンジェリコ」

以前、私がイタリア語を習っていた時、当時所属していたイタリア人講師たちに D’Angelico の読み方を尋ねたことがありました。

その時の答えは、いずれも「ダンジェリコ」に近いものでした。

ここで関係してくるのが、エリジオンという仕組みです。

イタリア語では elisione、カタカナで書けば「エリジオーネ」。発音しやすくするために、語の最後の母音が落ちることを指します。難しく聞こえますが、要するに「くっつけて読むために、音が少し省略される」ということです。

D’Angelico の D’ は、イタリア語として見れば dii が落ちた形と考えるのが自然です。つまり、形としては di Angelico が詰まって D’Angelico になったものです。

ですから D’ は、単なる飾りではありません。di の痕跡です。

そう考えると、イタリア語としては「ディ・アンジェリコ」と一語ずつ区切るより、「ダンジェリコ」に近く聞こえるのも納得できます。

「では、ダンジェリコと書くべきなのか」

では、このサイトでも「ダンジェリコ」と書くべきなのでしょうか。

結論から言えば、私はそうしません。

この記事では「ダンジェリコ」ではなく、「ディアンジェリコ」と表記します。

イタリア語としては「ダンジェリコ」に近い。けれど、日本の楽器店やギター雑誌などでは「ディアンジェリコ」という表記が広く使われてきました。このサイトでも、その慣用に合わせます。

D’Angelicoは、名前の響きこそイタリア系ですが、ギター製作家としてはニューヨークの人です。John D’Angelicoはニューヨークのリトルイタリーに生まれ、1930年代のニューヨークでギター製作家として名を残しました。

つまり、D’Angelicoという名前には、イタリア語としての読みと、ニューヨークのギター製作家として日本で受け入れられてきた呼び名の両方があります。

その折り合いを考えるなら、このサイトでは「ディアンジェリコ」とするのがよいと思います。

「D’Aquistoはどう読むのか」

この話をすると、当然 D’Aquisto の読み方も気になります。

D’Aquisto も D’Angelico と同じく、D’ で始まる名前です。イタリア語として見れば、こちらも di のエリジオンと考えるのが自然です。

ただ、日本のギター界では D’Aquisto は「ダキスト」として定着しています。

英語やイタリア語の発音にもう少し寄せれば、「ダクィスト」や「ダクイスト」に近くなるのでしょう。しかし、ギター好きの間では「ダキスト」で十分に通じますし、むしろそちらの方が自然です。

したがって、このサイトでは D’Aquisto についても「ダキスト」と表記します。

ここで大事なのは、D’Angelicoを「ディアンジェリコ」、D’Aquistoを「ダキスト」とすることが、発音記号のような厳密な音写ではないという点です。

どちらも、日本の楽器店やギター雑誌で定着した表記に従う、という判断です。

「ディアンジェリコとダキスト」

一見すると、少し統一感がないようにも見えます。

D’Angelicoは「ディアンジェリコ」。D’Aquistoは「ダキスト」。

片方は D’ を「ディ」と読んでいるように見え、もう片方は D’ を含めて「ダ」となっている。たしかに、語学的な厳密さだけで見れば、あまり整ってはいません。

しかし、これは外来語としての定着の問題です。

人名やブランド名は、必ずしも原語の発音そのままに日本語化されるわけではありません。特に楽器の世界では、輸入元、楽器店、雑誌、愛好家の間で使われるうちに、ある程度の慣用表記が固まっていきます。

D’Angelicoは「ディアンジェリコ」。D’Aquistoは「ダキスト」。

厳密なイタリア語発音とは少し違っていても、日本のギター好きに向けて書くなら、この表記がもっとも通りがよいと思います。

「ただし、アンジェリコは少し違う」

なお、古い国内アーチトップ関連の資料では、D’Angelicoを「アンジェリコ」としているものも見かけます。

しかし、これは「ダンジェリコ」とも「ディアンジェリコ」とも少し違います。

D’Angelicoの D’ をどう読むかという問題ではなく、D’ そのものを落としてしまっているからです。

D’ は単なる飾りではありません。姓の一部です。

D’Aquistoが「ダキスト」として日本語化されたのとは、事情が違います。あちらは名前全体が日本の楽器店やギター雑誌で定着したものですが、「アンジェリコ」は D’Angelico から D’ を取り落としてしまっている。

細かいと言えば細かい話です。

しかし、D’Angelicoという名前をどう扱うかは、その製作家をどう受け取っているかにも少し関わってくるように思います。

名前の一部を落としてまで簡単にする必要があるのか。

そこには、少し引っかかるものがあります。

まあ、そういう呼び方をする人もいる、ということです。(^^;;

「このサイトでの表記」

最後に、このサイトでの表記をまとめておきます。

D’Angelico は「ディアンジェリコ」。

John D’Angelico は「ジョン・ディアンジェリコ」。

D’Aquisto は「ダキスト」。

James L. D’Aquisto は「ジェームス・L・ダキスト」。

イタリア語としての発音を考えるなら、D’Angelico は「ダンジェリコ」に近い。ただし、日本のギター記事としては「ディアンジェリコ」とする。

D’Aquistoも、原語の発音に寄せれば少し違ってくるのでしょうが、日本のギター界では「ダキスト」でよい。

表記というのは、ただのカタカナの問題に見えて、意外と厄介です。

原語に忠実であること。日本語として通じやすいこと。検索しやすいこと。そして、その名前がどのように受け入れられてきたか。

そのあたりの折り合いをつけるなら、やはりこのサイトでは「ディアンジェリコ」で統一するのがよいと思います。

D’Angelico。

今さらですが、このサイトでは「ディアンジェリコ」と読みます。

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